絶対音感と相対音感について

絶対音感は、大人になってからでは身につかない?

絶対音感は、大人になってからでは身につかない?

「絶対音感」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。音を聞いただけで、その音名が瞬時に分かる能力のことです。幼少期に音楽教育を受けた一部の人だけが持つ、特別な才能として語られることが多いでしょう。

実際、絶対音感は幼少期に身につけるのが最も効果的だと言われています。一般的には、6歳の誕生日までに身につけ、12歳の誕生日まで維持すれば、一生消えないという説もあります。なぜ、ある程度成長すると難しくなるのでしょうか。それは、相対的な感覚が強くなるからです。

絶対音感教育の現場でNGとされる教育法があります。それは、「ねえ、ちゃんとよく聞いて。比べて。さっきと比べてどっちが高い?」という問いかけです。教育者の気持ちは分かりますが、これは完全に相対音感の育成方法なのです。

つまり、絶対音感とは、何かと比較する知能が発達する前に、頭の中に音を植え付けてしまう能力だと言えます。ちょうど、私たちが色の名前を記憶するように。

音はグラデーション、区切りは恣意的なもの

音はグラデーション、区切りは恣意的なもの

1オクターブの中の音は、鍵盤上では区切られており、ギターにもフレットがあります。しかし、バイオリンやトロンボーンを見れば分かるように、音は本来グラデーションなのです。

ちょうど、虹の7色も、グラデーションの中の恣意的な区切りであるように。音もまた、連続したスペクトルの中で、文化や楽器によって区切られているに過ぎません。

大人でも身につく「感覚記憶」の可能性

大人でも身につく「感覚記憶」の可能性

さて、絶対音感は本当に大人になってからでは身につかないのでしょうか?

絶対音感を別の角度から見てみましょう。それは、ラベリングされた五感の記憶とも言えます。そして、大人になってから五感に関する優れた記憶を身に着けた人は、確かに存在します。

たとえば、ソムリエです。

ソムリエは、ワインの味や香りや色について、繊細で優れたラベリング記憶を持っています。グラスをくるくる回して、匂いを感じて、一口味わえば、「実に新世界らしいカベルネ・ソーヴィニヨンだ」「さすがブルゴーニュのピノ・ノワール、別格です!」などと見事なテイスティング技法を見せます。

しかし、彼ら彼女らがワインについての英才教育を幼少期から受けていたとは、道義的にも法律上も考えられません。間違いなく、大人になってから身につけた感覚記憶なのです。

たった一音を記憶すればいい

絶対音感というのは、音の記憶です。色々なタイプの音を全てラベリングして瞬時に当てるタイプの絶対音感は、確かに大人になってからでは身につけにくいかもしれません。批判精神が育つ前に、文字通り、杓子定規な絶対的感覚として身につけた方が早いのだとは思います。

一方で、基準音さえ分かれば、優れた相対音感の持ち主は、疑似絶対音感的に音を探り当てることができます。

であれば、話は簡単です。たった一音、基準となる音を記憶し、それを脳内再生できればいいのです。(基準音はなんでも構いませんが、「ド」が利便性において優れていると思います)

ソムリエが大人になってから身につける必要のある能力に比べれば、なんとも簡単だと思いませんか?

好きな曲のイントロが、あなたの基準音になる

好きな曲のイントロが、あなたの基準音になる

しかも、朗報があります。

好きな曲を脳内再生するのは、おそらく未経験者でも難しくありません。そのお気に入り、いつでも変わない形で頭の中に再生できる曲のイントロの音が何の音かが分かれば、基準音の代わりとして十分機能するのではないでしょうか。

たとえば、あなたが大好きな曲のイントロが「ソ」の音で始まるとします。その曲を思い浮かべれば、いつでも「ソ」の音を脳内で鳴らすことができます。そこから、相対音感を使って他の音を探り当てることができるのです。

相対音感こそが、音楽の本質を体現している

そして、そこからは相対音感の出番です。

音程や、コードの響きを聴きとる力、すなわちいくつになっても伸ばせると言われている相対音感を磨くことで、耳の力は鍛えられます。

融通のきかないデジタル的な絶対音感ではなく、音楽の音同士の関係性を感じ取るアナログな相対音感の方が、音楽の本質を体現していると私は思います。

音楽は、単音の羅列ではありません。音と音の関係性、ハーモニー、メロディの流れ、そしてコードの進行。それらを感じ取る力こそが、音楽を深く理解し、楽しむための鍵なのです。

NEXUSで、あなたの耳を育てよう

NEXUSで、あなたの耳を育てよう

NEXUSは、まずたった一音、基準となる「ド」の音を記憶するところから始まります(Stage 1)。

そして、その基準音をもとに、コードの響きを聴き分ける力を育てます(Stage 2, Stage 3)。

大人になってからでも、遅くはありません。

あなたの好きな曲のイントロを思い浮かべながら、一緒に耳を育てていきましょう。